藍染め(藍印花布)について
このページでは、当店(中国雑貨 華蔵)にて販売している藍染め生地(藍印花布)について作成方法を中心に、特性を詳しく説明しています。
(最終更新:2022年02月)
◆藍染めの紹介と作り方 もくじ◆
<藍染と印花布の歴史>
「藍染め」というと、とても和風な響きを感じる方が多いかと思います。
藍染めの浴衣やのれん、絞り染めの巾着袋など..
日本ではあまり知られていませんが、実は中国でも藍染めはかなり一般的なもので、「印花布(いんかふ)」と呼ばれています。
※ 印花布は図案が施された染色生地全般を広く指す言葉でもあるので、藍染めの場合には特に「藍印花布」とも呼ばれます
(逆に、図案の無い無地の藍染生地は「藍布」と呼ばれることもあります)
中国では古く秦の時代(紀元前220年頃。始皇帝の時代)には既に藍染めの原型ができあがっていたとの記録があるようです。
当店の実店舗に来店されるお客様も、「中国にも藍染めがあるんだ!」と驚かれる方も多いですが、それほど日本に藍染め文化が根付いている、という事ですね。
日本には、六世紀ごろに原料となる藍が中国より伝わり、それ以降広く藍染めが作られるようになりました。
中国では、(発酵が必要なため温暖な)南方を中心に各地で藍染めが作られています。
ただ、自然染料を使用した本当の藍染めは、やはり年々数が少なくなっています。
当店では、杭州から車で一時間ほどの距離にある「桐郷」という場所で作られた藍染め製品を扱っています。(人力自転車のタクシーが走っているような場所です)
ここで自然素材を使用した藍染生地が作られています。
※ 2016年からは中国南通にある、型紙から完全に手作業で作成している工房とも提携をしましたが、販売価格は(当店の従来の値段とは)大きく異なり、桐郷の生地の4倍程度になります。(なので、このページではその工房については取り上げていません)
<ココがスゴイ!藍染めの性質と効果>
藍染めには、紫外線を防止(軽減)する効果と抗菌効果があります。
服やバックはもちろん、カーテン・帽子、テーブルクロス・ハンカチ、ふとんカバーなどに使うのがオススメです!
「服や帽子:汗をかいても汗臭くなりにくい(抗菌効果)」
「カーテン:太陽光による日焼けや皮膚の老化を防いでくれる(紫外線防止効果)」
「服や小物:虫がつきにくい(防虫、抗菌効果)」
などなど、いろいろな効果があると言われています! 身の回り品として藍染めを取り入れてみてはいかがですか?
<ちょっと注意!藍染めのお手入れ方法>
当店で取り扱っている藍染め生地・小物には、全て天然の藍(蓼藍・ダテアイ)を使用しています。
そして、人工的な色素や定着剤などは使用していないので、『最初は色が落ちます』。
作成時に、何度も水洗いをして乾かしてはいますが、まだ余分な色が残っているのです。(湿度が少ない場所ならば色落ち・色移りはまずしませんが、最初に水洗いしておく事を強くオススメします)
最初の水洗いについて
- ・お買い上げ後、水に入れて軽く揉み洗いをしてください。
- ・最初に洗う際には、水だけで洗ってください。(特にアルカリ性の)洗剤や柔軟剤などは使用しないでください。
- ・洗濯機を使っても、お風呂や桶に水を張って手洗いしてもOKです。
- ・これで、余分な色が落ちます。この後、脱水して乾かしてください。
- ・乾かす際は陰干しでも直射日光の下でも大丈夫です。
◆お買い上げ後最初の水洗いや色落ちについては、専用の「藍染め生地の水洗いと色落ち」ページにて画像と文章で詳しく説明していますので、そちらもご覧ください。
普段のお洗濯やお手入れについて
- ・繰り返し洗っても、生地の色はほとんど変わりません(何十回と洗ううちに、僅かに薄くなっていきます)
- ・(2回目以降は)洗剤を入れ、他の物と一緒に洗っても大丈夫です
- ・陰干しでなく、直射日光の下で干しても大丈夫です
※何日も干しっぱなしはダメです(日光が当たり続けたところだけ日焼けする可能性があります)...
<藍染め選びのポイント>
当店で扱っている藍染め生地には以下のものがあります。柄の
- 「無地」 …柄の無い、まさに無地(むじ)のもの
- 「シンプル」…小さめの柄が規則的にに並んでいるもの
- 「藍色」 …藍染め生地の中で、藍色部分の面積が大部分を占めるもの
- 「白色」 …白色と藍色の面積が半々程度のもの
- 「大白色」…白色部分の面積が大部分を占めるもの
- 「三色」 …白色、水色、藍色の三色になっているもの
「絞り染め」…染める前に糸で縛り、絞り染めされた生地※ 現在製造休止中
工程数や使用する型紙の数により、生地の価格は
無地 < シンプル = 藍色 < 白色 < 大白色 = 三色
の順に高くなっていきます。(1メートルあたり税込2000円から)
→ 藍染め生地 全柄一覧(別ページに移動します)
<藍染め生地(印花布)の作り方>
1.型紙(花板)の設計・製作
まずは、藍染め生地のデザインを設計します。現在、絵柄のデザインにはパソコンを使用しています。パソコンで設計したデザインを、プリンタのような機械(指定された部分の型紙を切り抜く特殊機械)で打ち出し、型紙を作ります。
左の画像は、打ち出しが完了した型紙です。中国ではこの型紙を「花板」と呼んでいます。型紙はこれ以降の工程で綿生地の上に乗せて使用するので、全て原寸大で作られます。
...なんというか、この工程だけ凄く現代的ですね。作られた型紙には桐油と呼ばれる油を塗り、強度を高めることでより長く(繰り返して)使えるようにしています。
一度使った花板は、そのままポイ...なんてことはありません。結構な強度があるので、繰り返し再利用しますよ。昔のデザインを保存しておくという意味合いもありそうな感じです。
保存棚全体が白っぽく見えるのは、後述する防染剤(大豆と石灰)の粉が付いているからです。
型紙のサイズは、何種類もの規格があります。生地を作るための(繰り返し並べて使うので上端と下端で柄が繋がっている)ものや、テーブルクロスやハンカチを作るための(1つの型紙でデザインが完結する)ものなどですね。
特殊サイズのオーダーが入ったときなどには、規格外の特殊サイズの型紙を作る事もあります。(これを見ている貴方のオリジナルデザイン生地を作ることもできますよ!)
2. 防染剤の塗布
型紙を藍染めの生地(通常は綿生地)の上に重ねて、その上から防染剤を塗ります。防染剤は石灰と大豆の粉(日本で「呉汁」と呼ばれるものに近いです)を泥状に練った物をで、自然原料のみで作られています。
木枠にはめて固定した型紙(花板)を、生地の上にズレないように重ねて置き、刷毛のような道具で防染材を塗っていきます。左の写真は、防染剤を塗った後で型紙を外した状態の生地です。少し見にくいですが、中央に4匹の蝶のデザインがあるのが見えますね。
防染剤をしっかり定着させる為に、7日間程度陰干しをして乾燥させます。乾燥させる日数は、季節や天候によって多少変動しますよ。生地が長い(約12メートル)あるので、乾かすのにも結構スペースが必要なのです。カーテンのように見えるのは、互いに触れない程度に畳んだ状態で天井のレールから吊り下げられている生地です。
防染剤を塗った箇所は染色されないので、最終的にこの部分が白色で仕上がってきます。白色部分が多い生地ほど、防染材がたくさん必要&塗るのに時間が掛かるので、出来上がった藍染め生地の価格も高くなる訳です。 ついでに言えば、オーダーメイドなどで非常に細かい柄を作る場合も(防染材を正確に塗るのに時間がかかるので)価格は高くなりますよ。
3. 染色
藍染め作りのメイン工程、染色です。「藍」という植物の葉っぱを発酵させて作った染液を使用して染色を行います。
日本と同じく蓼藍(タデアイ)を発酵させて、日本で言う「すくも」を作り、靛藍(インディゴ)を生成して染色します。
染料の配合や発酵の程度、染色回数によって色合いが少しずつ変わっていきます。同じデザインの生地でも多少色合いが異なる場合があるのは、染液の発酵工程や染色回数の決定などを、全て職人が手作業で行っているからです。手作り製品ならではの特徴ですね。
ただ、効率よく綺麗に染色する為に、生地を器具に巻きつけて、クレーンで吊るして染液にザブンと浸けています。一反(約12m)ある生地は、厚さにもよりますが完成時でも2~4kgあるので、これが染液で濡れると相当な重さですよね..。生地の両端に稀に残る小さな未染色の(2cm×5ミリくらいの)点は、こうやって吊り下げたときに生地を引っ掛けている部分が染まらずに残ってしまったものです。
明るい藍色を出すなら3,4回、濃い色を出すならば10回程度染色を繰り返します。
4. 洗浄・乾燥
染色が完了した生地を、良く水洗いして余分な染料を落とします。柄の入っている生地は、その後で生地に付いている防染剤をはがし、天日干しして乾燥させます。
画像では、高さ6mくらいの物干し竿から生地を吊るして乾かしていますね。作りたての生地が風になびいている様は、爽やかさを感じさせてくれてなかなか風流なものです。
藍染め自体は通年作れるのですが、工程上(藍の発酵や染色後の洗浄・乾燥など)寒い時期だとより作成に時間がかかります。
また、作成時期により「氷紋(生地の白色部分に現れるヒビ状の模様)」の多寡が変わってくるのもポイントです。(夏場等の高温期は多く出やすいです)
以上で、藍染め生地についての説明はおしまいです。いかがでしたか?
天然染料を使用して手作業メインで作っている為、たまに染めムラや柄の出方が微妙な生地もあったりするのですが(そういう場合はワケあり品として明記して販売しています)、独特の風合いがあり、とても面白くて奥深い生地なのです。
色々なものを作る素材として活用してみてくださいね!
2020年から藍染め以外にも「クチナシ」、「ナンキンハゼ」、「アカネ」、「杭白菊」などを材料にした草木染めも行っています。
→天然草木を染料とした草木染め生地一覧
生地の卸売りやデザインのオーダーメイドも可能ですので、興味がある方はお気軽にお問い合わせください。